まずは鉄骨工事について最初に覚えたい用語・部材・図面を解説します。
1.鉄骨造の基本を知る
鉄骨造の建物は、柱や梁などの主要な部材を組み合わせて建物の骨組みをつくっています。
鉄骨工事を理解するためには、まず柱や梁の役割や、どのような鋼材が使われているのかを知ることが基本です。
ここでは、鉄骨造を理解するうえで最初に覚えておきたい基本的な部材や鋼材について紹介します。
鉄骨造とは
鉄骨造(S造)とは、柱や梁などの建物の骨組みに鉄骨(鋼材)を用いた建築構造です。英語の「Steel(スチール)」の頭文字をとってS造とも呼ばれ、高い強度と粘り強さがあり、耐震性に優れているのが特徴です。
柱・梁とは
柱は梁などから伝わってくる建物の荷重を受け、基礎へ伝える部材です。角形鋼管やH形鋼などが用いられます。
梁は水平方向に架けられる部材で、床や屋根などの荷重を受け、柱へ伝える役割があります。
角形鋼管・H形鋼とは
角形鋼管は断面が四角形になっている鋼材で、鉄骨造では主に柱として使用されます。
H形鋼は断面が「H」の形をした鋼材で、主に柱や梁などに使用されます。鉄骨工事では非常によく使われる鋼材なので、それぞれの特徴や違いを覚えておきましょう。




大梁・小梁とは
大梁は主に柱と柱をつなぐ主要な梁で、床や小梁などから受けた荷重を柱へ伝える役割があります。
小梁は主に大梁と大梁の間に配置される梁で、床の荷重を受けて大梁へ伝える役割があります。
鉄骨図面を見るうえでも大梁と小梁の違いは基本となるため、最初に覚えておきたい部材です。
2.鉄骨接合部を知る
鉄骨造では、柱や梁などの部材をさまざまな方法で接合して建物を組み立てていきます。
ここでは、鉄骨工事でよく使われる接合部や補強材について紹介します。
ガセットプレート
ガセットプレートとは、ブレースなどの部材を柱や梁に接合するために取り付ける鋼板です。
部材から伝わる力を柱や梁へ伝える役割があり、鉄骨造の接合部でよく使用されます。

ベースプレート
ベースプレートとは、鉄骨柱の一番下に取り付けられる鋼板です。
柱から伝わる荷重を基礎へ伝える役割があり、アンカーボルトなどを使って鉄骨と基礎を固定します。

スプライスプレート
スプライスプレートとは、柱や梁などの鉄骨部材同士をつなぐために使用される鋼板です。
主に高力ボルトと組み合わせて使用され、部材から部材へ力を伝える役割があります。

ダイアフラム
ダイアフラムとは、柱と梁の接合部などに設けられる補強用の鋼板です。
梁から柱へ力を伝える重要な役割があり、通しダイアフラムや内ダイアフラム、外ダイアフラムなどの種類があります。

スチフナー
スチフナーとは、柱や梁などを補強するために取り付ける鋼板です。
大きな力が加わる部分などに設けることで、鋼材の局部的な変形を防ぐ役割があります。

高力ボルト
高力ボルトとは、鉄骨部材同士を接合するために使用される強度の高いボルトです。
鉄骨工事では、主に高力ボルトを強く締め付けることで生じる摩擦力を利用して部材同士を接合します。
溶接とは
溶接とは、鉄骨部材の接合部分を熱によって溶かし、部材同士を一体化させる接合方法です。
鉄骨工事では主に完全溶込み溶接や隅肉溶接などが使われ、柱や梁、各種プレートなどさまざまな部分の接合に用いられます。

3.鉄骨工事に出てくる部材を知る
鉄骨造の建物には、柱や梁などの主要な部材以外にも、建物を構成するためのさまざまな部材が使われています。
それぞれの名称や役割を知っておくことで、鉄骨図面や現場での打ち合わせも理解しやすくなります。
ここでは、鉄骨工事でよく出てくる代表的な部材について紹介します。
スタッドジベル
スタッドジベルとは、鉄骨の梁とコンクリート床などを一体化させるために使用される棒状の部材です。
主に梁の上フランジなどに溶接され、鉄骨とコンクリートの間で力を伝える役割があります。

エレクションピース
エレクションピースとは、鉄骨柱を現場溶接する際に、部材を仮固定するために取り付ける鋼板です。
現場溶接を行うまで柱を固定する役割があり、溶接完了後は現場で切断・撤去します。

胴縁
胴縁とは、建物の外壁材などを取り付けるために設けられる下地材です。
主に柱などに取り付けられ、外壁から受けた力を建物の骨組みへ伝える役割もあります。

母屋
母屋とは、屋根材を支えるために設けられる部材です。
主に梁などの上に配置され、屋根から受けた荷重を建物の骨組みへ伝える役割があります。
耐風梁
耐風梁とは、主に建物の外壁に作用する風圧力を受けるために設けられる部材です。
外壁から受けた風による力を柱などの主要な骨組みへ伝える役割があります。

ぶどう棚
ぶどう棚とは、天井内などに設けられる鉄骨の天井下地材を格子状に組んだものです。
主に天井や設備などを支持するために設けられ、その見た目がぶどうを栽培する棚に似ていることから「ぶどう棚」と呼ばれています。

4.鉄骨図面(構造図)を読めるようになる
鉄骨工事を理解するためには、部材の名称だけでなく構造図の読み方を覚えることも重要です。
構造図には柱や梁の配置、部材の大きさ、接合方法、高さなど、鉄骨を製作・施工するために必要なさまざまな情報が記載されています。
ここでは、鉄骨図面を読むうえで最初に覚えておきたい基本的な図面や記号について紹介します。
伏図
伏図とは、建物を上から見た状態で、柱や梁などの配置を表した図面です。
どこに柱や梁が配置されているのか、どのような部材が使われているのかなど、建物の骨組みを平面的に確認することができます。
軸組図
軸組図とは、建物の骨組みを横から見た状態で表した図面です。
柱や梁の位置関係や高さ、階高などを確認することができ、伏図とあわせて見ることで建物の骨組みを立体的に把握しやすくなります。
鉄骨詳細図
鉄骨詳細図とは、構造図をもとに鉄骨を実際に製作・施工するために、部材や接合部などをより詳しく表した図面です。
柱や梁の形状・寸法、ボルトや溶接、各種プレートなど、鉄骨を製作するために必要な詳細な情報が記載されています。
柱、梁符号
柱や梁には、それぞれの部材を識別するために符号が付けられています。
一般的に柱には「C」、梁には「G」や「B」などの記号が使われ、構造図の部材リストと照らし合わせることで、使用する鋼材の種類やサイズなどを確認することができます。
寸法・レベルの見方
鉄骨図面には、部材の位置を示す寸法だけでなく、高さを示すレベルも記載されています。
通り芯からの寸法やFL(フロアレベル)などを基準として、柱や梁などがどの位置・高さに配置されるのかを確認します。
寸法とレベルを正しく読み取ることは、鉄骨の製作や現場での建方を行ううえで非常に重要です。
5.鉄骨の数量、重量を理解する
鉄骨工事では、使用する鋼材の重量やボルト、スタッドなどの数量を把握することも重要です。
これらの数量は、材料の発注や見積り、工事費の算出などにも関わってくるため、基本的な計算方法を覚えておくと実務でも役立ちます。
ここでは、鉄骨工事でよく使われる重量や数量の基本的な考え方について紹介します。
鋼材重量
H形鋼や角形鋼管などの鋼材には、サイズごとに1m当たりの単位重量が定められています。
基本的には「単位重量 (m)× 使用する長さ」で鋼材の重量を求めることができ、本数が複数ある場合はさらに本数を掛けて全体の重量を算出します。
鋼板重量
鉄骨工事では、ガセットプレートやスプライスプレート、スチフナーなどさまざまな鋼板が使用されています。
鋼板の重量は、板厚x幅x長さから体積を求め、鋼の密度7.85を掛けることで算出できます。
鋼板の枚数が多くなると重量も大きくなるため、鉄骨全体の重量を把握するうえでもとても重要です。
【板厚(mm) × 幅(m) × 長さ(m) × 7.85 = 重量(kg)】
※使用する寸法の単位によって計算式が異なるため注意が必要です。
ボルト数量
鉄骨工事では、柱や梁などの接合に多くの高力ボルトが使用されています。
ボルト数量は、図面に記載された各接合部のボルト本数を確認し、それぞれの接合箇所を集計して算出します。
ボルトの径や長さ、種類なども異なるため、数量だけでなく規格ごとに分けて確認することが重要です。
スタッドの概算数量
スタッドは、鉄骨梁とコンクリート床を一体化させるために梁の上部などへ一定の間隔で配置されます。
概算数量を求める場合は、スタッドを施工する梁の長さと配置間隔をもとに、「概算時の目安として、物件によっては『鉄骨重量(t)×30本程度』で数量を見込むこともあります。」これでおおよその本数を算出して見積ることがあります。
ただし、実際のスタッドの本数や配置は構造図などによって決められているため、最終的な数量は図面を確認する必要があります。

鉄骨工事は基本から少しずつ覚えよう
鉄骨工事では、今回紹介したもの以外にも多くの専門用語や部材が出てきます。
私自身も鉄骨に関わる仕事をする中で、実際の図面や現場を見ながら少しずつ知識を身につけてきました。
このブログでは、鉄骨工事で使われる部材や専門用語、図面の見方、重量・数量の計算方法などをできるだけ分かりやすく紹介しています。
分からない用語が出てきたときは、それぞれの詳しい解説記事も参考にしてみてください。


コメント