鉄骨工事をするうえで様々な検査があります。
製品検査はもちろんのこと設計図書には軸力検査といった項目にチェックが入っていることがあります。
毎回工事受注ごとに行うものではなくたまにチェックが入っているので行わなければいけないので注意が必要です。
今回は軸力検査とは何でどのような検査を行うのかを解説していきます。
軸力検査とは

軸力検査とは現場でのボルト受け入れの際に行うボルトの導入張力確認試験(通称:軸力検査)のことを言います。
要はボルトが不良品ではないかの検査を費用を出して行おうという検査です。
建物の鉄骨を繋ぐときにつかう「高力ボルト」はしっかり締め付けることで摩擦力を発生させて構造的に安全に保つことができます。
そのためちゃんと軸力=締付け力がかかっているかを検査するのです。
簡単に言うと固定力のことです。
そしてボルトを締める際にトルクと言いますがこれはボルトを締める回転力のことを言います。
この軸力検査は様々な呼び名があり軸力導入試験と言ったり、高力ボルト軸力確認試験、締付軸力確認試験、ボルト軸力検査、軸力測定など様々な文言で設計図書には書かれています。
これは全て軸力検査と捉えておいて問題はありません。
軸力検査の背景と流れ

日本は1970年~1980年代に高層建築が進み鉄骨構造の複雑化がすすみました。
1990年代頃になると実大実験や構造試験の精度の向上が進み「軸力が確実に導入されているか」を確認するための試験方法が確立されました。
1995年には建築基準法の改正などに伴い、接合部の性能評価が厳格化しました。
2000年代に入り阪神淡路大震災や東日本大震災をきっかけに構造の健全性・接合部の信頼性に注目が集まりました。
そして軸力導入検査や、軸力の検証が重要視されこのような検査が行われるようになりました。
軸力検査のやり方


軸力検査は建方前日や当日などに現場で行うことが多いです。
- 軸力試験
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高力ボルト検査㈱というところに申込書を送って予約そしておくことでそこから各県委託された資格をもった業者が来て検査を行います。
- 軸力計を使って・・・
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軸力を測る軸力計を持ってきて使用するロッドと同じボルトを用意してトルク値を測っていきます。
- 高力ボルトを
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高力ボルトを1サイズ15本ほど用意してランダムに5本を選んで計測していきます。
- 数値を測定
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高力ボルトはピンレールが破断したときのトルク値には許容範囲がありその範囲に入っていれば合格とし、そのボルトを使用することができます。
軸力検査の重要性の再確認

構造物はボルトなどの接合部が弱点になって崩れる可能性があります。
そういった観点からボルト接合部分の部材ボルトを検査するようになり職人の経験や人為的ミスを防ぐ為に数値で確認できるようにしました。
地震大国日本でのリスクに備える為にもこの検査の見直しがされました。
日本では建築基準法がしっかりと規定されていてかつボルトメーカーの技術の向上により軸力検査はあまり行われていませんでした。
しかし2019年に高力ボルトが無くなるといった噂が流れて大手ゼネコンが買占めに走り、日本中から高力ボルトが無くなり、納期が6ヶ月~9ヶ月といった事態が起こりました。
建物の工期などは決まっている為苦肉の策で海外製の高力ボルトが出回りました。
建物のトルク値がちゃんと出ていない建物を建てるわけにはいかず日本製のボルトを待っていたら建物がいつまでたっても建たないといった状態になる為ボルトの軸力検査を行いボルトを使用していいといった判断をするようになりました。
このような背景から軸力検査を行う物件などが増えました。
軸力検査の費用

軸力検査は使う使用サイズのボルトをそれぞれ15本づつ用意します。
M16x70
M20x75orM20x85
M22x80orM20x85
M24x85orM24x90
M27x115orM27x120
M30x115orM30x120
長さには指定があり、軸力計に入って締付けまでを行える長さで用意しないといけません。
ボルト径ごとでM20であれば長さが75もしくは85の長さをどちらか一方15本用意しないといけません。
現場で使う高力ボルトと同じロッドので造られていなければいけません。
これは一般的な費用になるので条件などが付いてくると費用はかさみます。
あくまでもある程度の目安として覚えておきましょう。
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